[松の木があるサント・ヴィクトワール山」1887年頃
昨年5月東京国立新美術館(六本木)にセザンヌ展を見に行ってこの絵の構図レイアウトを見た時、私のやり方は間違っていないんだなと感じたことを覚えています。
岩波文庫のエミル・ベルナール「回想のセザンヌ」では、エクス=アン=プロヴァンスのアトリエを訪ねてスケッチに同行した約1か月のことが書かれ、当時60代半ばのセザンヌの日常生活や特徴ある性格が描かれています。
セザンヌのアトリエには老マダム・ブレモンという家政婦がいて、朝昼晩そこで定時に食事し約2㌔の道を歩いてsur le motif(写生)に朝昼出かける規則正しい日常を過ごし、仕事のスピードはとても遅いと書かれているので上記の風景画が出来るまで10回位は現場に通うのだとすると、終始一貫した構図レイアウトで描いた筈だと思います。
上記の絵に垂直・水平の6本の点線を引いてみると、繰返し何日も同じ写生現場に行っても絵に狂いがないよう、どのように工夫していたのかが分かります。垂線の中心「垂」の線は①山の斜面から斜めに下がる線 ②ローマの遺構のような橋の左端 ③道の上の赤い小屋 ④道の下の樹木 を通り 同様に「平」は ①ローマ橋の直下 ②道の先の大きな建物の屋根 を通っています。 他の線についても同じことが言えます。
また、描かずに画面から外すこともできる手前の松の枝葉を、敢えて細部まで画面の中に入れて、遠くの山との遠近感・展望感(景観)を出しているのだと思います。 絵の構図は巨匠たちの作品から学べても、表現力のレベルの方は沢山のお手本から吸収することができるのでしょうか。
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